考え方

「skills」ってなに?

ひとことで言うと、「この仕事は、こう進めてね」と書いておいた一枚のメモです。 AIに毎回説明する手間を、そのメモが肩代わりしてくれます。

新しい機能でも、難しい設定でもありません。ふだん人に仕事を引き継ぐときに書く手順書と、 考え方はまったく同じです。保存場所と作り方まで順を追って説明するので、 読み終わったら自分の1つ目が作れます。プログラムの知識は要りません。

このページの流れ

なぜ必要になるのか

AIに仕事を頼むとき、いい結果を出すには前提をきちんと伝える必要があります。 でもそれを毎回打つのは現実的ではありません。そこを埋めるのがスキルです。

スキルがないとき
「あなたはうちのディレクターです。納期とセキュリティを最優先に考えて、 見積もりはタスクを分解してから出してください。それから……」
毎回この長文を打つことになる。しかも打つ人によって内容がブレるので、 出てくる答えの質も日によって変わってしまう。
スキルがあるとき
/pm 見積もりお願いします
長い前提はメモ側に書いてある。だから誰が打っても、いつ打っても、 同じ基準で同じ品質の答えが返ってくる。

打ったときに起きていること

  1. /pm と打つ
    たった3文字。覚えることはこれだけです。
  2. 対応するメモが読み込まれる
    「PMの責務」「判断で迷ったときの優先順位」「答えの書き方」などが書かれた ファイルが、その場でAIに渡されます。
  3. AIがその役の人として振る舞う
    なんでも屋さんから、その分野の担当者に切り替わります。 聞き方が同じでも、返ってくる答えの深さが変わります。

skillsはどこに保存されているのか

特別なサーバーやクラウドではなく、自分のパソコンの中のフォルダに入っています。 置き場所は2種類あり、どちらに入れるかで使える範囲が変わります。

種類場所使える範囲
自分用 ~/.claude/skills/ どの案件でも使える。ふだん使うのはこちら
案件用 .claude/skills/ その案件のフォルダの中だけ。案件固有の手順を入れる

~ はホームフォルダ(自分のユーザー名のフォルダ)を指す記号です。 実際のパスはこうなります。

実際の場所
Mac      /Users/ユーザー名/.claude/skills/
Windows  C:\Users\ユーザー名\.claude\skills\
最初のつまずきポイント: フォルダが見つからない

.claude のように先頭がドットで始まるフォルダは、 通常は非表示になっています。探しても見つからないのはこのためで、 フォルダが無いわけではありません。

Macなら Finder を開いて command + shift + .(ドット)を押すと表示されます。 Windowsならエクスプローラーの「表示」メニューから「隠しファイル」にチェックを入れます。 同じ操作でまた非表示に戻せます。

中はこうなっています。フォルダ名がそのまま打つ言葉になるのがポイントです。 pm というフォルダを作れば /pm で呼べます。

~/.claude/skills/ の中身
skills/
├── pm/
│   └── SKILL.md      ← /pm で呼ばれる
├── writer/
│   └── SKILL.md      ← /writer で呼ばれる
└── qa/
    └── SKILL.md      ← /qa で呼ばれる

スキルの中身はどうなっているのか

SKILL.md という名前のファイルが1つ入っているだけです。 末尾の .md文字だけが入ったファイルという意味の印で、 Wordのように装飾の情報を持たないので軽く、AIがそのまま読めます。 くわしくは ObsidianをAIの作業台として使う の 「mdファイルとは何か」で説明しています。

中身はふつうの文章です。構成は2つに分かれています。

SKILL.md の例(校正担当のスキル)
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description: 誤字脱字と表記ゆれをチェックする。文章の校正を頼まれたときに使う。
---

## やること

渡された文章を読んで、次の順にチェックする。

1. 誤字脱字
2. 表記ゆれ(例:「Webサイト」と「ウェブサイト」の混在)
3. 二重敬語・回りくどい言い回し

## 報告のしかた

「元の文 → 直した文」の形で並べる。
勝手に書き換えず、報告だけする。
上の部分(---ではさまれた所)
いつ使うスキルか
AIがこれを読んで「今の相談はこのスキルの出番だ」と判断します。 自分で /proofread と打たなくても、 「この文章チェックして」と言うだけで勝手に使ってくれるようになります。
下の部分
やってほしいこと
手順・判断基準・報告の書き方など。ここがスキルの本体です。 ふつうの日本語で、新人に引き継ぐつもりで書けば十分です。

最初の1つを作る手順

Claude Code(デスクトップアプリでもターミナルでも同じです)を使える状態にしてから始めます。

  1. いちばん簡単な方法 — AIに作らせる
    実は、自分でフォルダを作る必要はありません。Claude にこう頼むだけです。
    「文章の誤字脱字をチェックするスキルを作って。 ~/.claude/skills/ に置いて」
    フォルダの作成もファイルの作成も全部やってくれます。 初めての1つは、この方法をおすすめします。 できあがったファイルを開いて中身を眺めれば、構造は自然と分かります。
  2. 手で作る場合 — フォルダを1つ作る
    ~/.claude/skills/ の中に、スキル名のフォルダを作ります。 ここでは proofread(校正)とします。 この名前がそのまま /proofread になります。
    日本語のフォルダ名も使えますが、打つときに変換が必要になるので、 英数字にしておくほうが楽です。
  3. その中に SKILL.md を作る
    ファイル名は必ず SKILL.md です(大文字)。 前の章の例をそのまま貼り付けて、内容を自分の仕事に書き換えてください。 メモ帳でもテキストエディットでも作れます。
    Macでの注意: テキストエディットは初期設定だと文字の装飾を保存する形式になっており、 このまま保存すると正しく扱われません。新規作成のあとメニューから 「フォーマット」→「標準テキストにする」を選んでください。 一度設定すれば以降は覚えてくれます。
  4. 呼んでみる
    Claude を開いて /proofread と打ちます。
    初回だけ注意: skills フォルダそのものを 今回はじめて作った場合は、Claude を一度閉じて開き直してください。 2つ目以降のスキルは、保存した時点ですぐ使えます(再起動不要)。
  5. 違ったら SKILL.md のほうを直す
    返ってきた答えが期待と違ったときに、その場で言い直すのではなく ファイルを直すのがコツです。 そうすると次回からずっと直ったままになります。ここが一番大事な習慣です。

初心者がまず何から始めればいいか

いきなり10個作ろうとすると、確実に途中で止まります。順番はこれだけです。

  1. 「毎回同じ説明をしていること」を1つ思い出す
    そこがスキルの種です。うまい題材が思いつかないなら、 いま自分がAIに一番よく頼んでいる仕事を選んでください。 文章の校正、議事録の整理、メールの下書きなど、地味なもので構いません。
  2. 1つだけ作って、1週間使う
    増やすのは後です。1つを実際に使い込むほうが、10個そろえるより身につきます。 使ってみて不満が出たら、その都度ファイルに書き足していきます。
  3. 2回目の「これ前も説明したな」で、2つ目を作る
    同じ説明を2回したら作りどき、という目安だけ覚えておけば、 あとは自然に増えていきます。増やすために増やす必要はありません。
やらなくていいこと

きれいに書こうとしないでください。読むのはAIと自分だけです。 体裁を整えはじめると手が止まります。箇条書きの断片で十分に働きます。

よくある勘違い

スキルを入れると、AIが賢くなる?
なりません。賢さは同じで、変わるのはどこに注意を向けるかです。 同じ人でも「今日は校正担当ね」と言われれば誤字に目が行くのと同じです。
プログラムが書けないと作れない?
書けなくても作れます。中身はふつうの日本語の文章です。 新人に仕事を引き継ぐつもりで書けば、それがそのままスキルになります。
毎回スラッシュで呼ばないといけない?
いいえ。ファイルの上部に書いた説明文をAIが読んでいるので、 関係のある相談をすれば自動で使ってくれます。 スラッシュは「今すぐこれを使ってほしい」と指名したいときに使います。
作ったスキルは他の人にも渡せる?
渡せます。フォルダごとコピーして、相手の同じ場所に置くだけです。 中身はただのテキストファイルなので、メールやチャットでも送れます。
全部覚えないと使えない?
覚える必要はありません。どのスキルがあるか忘れたら、 Claude に「今使えるスキルを一覧にして」と聞けば出してくれます。

ツムグルで使っている10個のスキル

TEAM TSUMUGURU という名前で、Web制作に必要な役割をひと通り用意しています。 人を雇っているわけではなく、すべてこの「メモ」です。 作るものを考えるときの参考にしてください。

打つ言葉 担当 頼めること
/pmディレクター要件整理・見積もり・公開していいかの判断
/marketerマーケター集客の設計・広告・SNS企画・申込率の改善
/designerデザイナー画面設計・Figmaまわり
/writerライターキャッチコピー・本文・ボタンの文言
/engineerエンジニアサイトの実装全般
/seoSEO担当検索に強くするための設定
/qa品質チェック不具合探し・サイト精査・文章校正
/infraインフラ公開作業・セキュリティ・サーバー設定
/analystアナリストアクセス解析・月次レポート・改善提案
/secretary秘書案件の状況一覧・やることの整理

制作の流れとスキルの対応

どれを使うか迷ったときは、実際の制作の順番と照らし合わせてください。ほぼそのまま対応しています。

受注/pm
戦略/marketer
設計/designer
実装/engineer
検品/qa
公開/infra
運用/analyst

ひとつの会話の中で切り替えても大丈夫です。実装が終わったら 「次は /qa でチェックして」と言えば、担当が入れ替わります。

スキルの利点は、一度書けば書いた本人がいなくても同じ品質で仕事が進むことです。 うまくいったやり方をその場かぎりにせず、チーム全体で使える形にして残しておく—— スキルはそのための仕組みです。まずは1つ、今日いちばんよく頼んだ仕事から作ってみてください。