仕事道具

ObsidianをAIの
作業台として使う

AIとの会話は消えますが、ファイルは残ります。決めたことをファイルに残しておけば、 次にAIを呼んだときも同じ前提から始められます。

Obsidian は無料のメモアプリです。ここではメモ術ではなく、 AIと一緒に使うための置き場所の作り方を説明します。 ダウンロードから順を追って書くので、まだ使ったことがなくてもそのまま進められます。

このページの流れ

なぜメモアプリが要るのか

AIを使っていると、必ずこれにぶつかります。

会話だけで進めると
「あのとき決めたこと、なんだっけ」
いい判断をしても、会話が流れれば消えます。翌週には同じ議論をもう一度することになり、 しかも前と違う結論が出たりする。
ファイルに落とすと
「このフォルダを読んでから話して」
決めたことが残り、次に呼んだAIも同じ前提に立てます。 人が変わっても、日が空いても、同じところから再開できる。

Obsidianとは・費用はかかるのか

パソコンにメモを保存するアプリです。似たアプリとの一番の違いは、 保存されるのがただのテキストファイルだという点です。 アプリ独自の形式ではなく、パソコンの中のふつうのフォルダとファイルとして置かれます。

これがAIと組み合わせるときに効きます。AIはそのファイルを直接読めますし、 将来Obsidianを使わなくなっても、中身は手元にテキストとして残ります。

項目費用必要か
アプリ本体 無料 これだけで足ります。仕事で使う場合も無料です
Obsidian Sync 月4ドル〜 複数の端末で同じメモを見たい場合のみ。パソコン1台なら不要
Obsidian Publish 月8ドル〜 メモをWebサイトとして公開したい場合のみ。ふつうは不要

アプリ本体は個人利用・商用利用のどちらも無料です。会員登録も不要で、 ダウンロードしてすぐ使いはじめられます。

mdファイルとは何か

Obsidianで書いたノートは、.md という種類のファイルとして保存されます。 Wordなら .docx、Excelなら .xlsx にあたるものだと思ってください。

ひとことで言うと文字だけが入ったファイルです。 Wordのように「文字を赤くした」「フォントを大きくした」といった情報を一切持たず、 中身は打った文字そのものだけ。だから軽く、どのパソコンでも開けます。

mdマークダウン(Markdown)の略です。 文字だけのファイルでも見出しや箇条書きを表せるように、 記号を使った簡単な約束事が決まっています。よく使うのは次の5つだけです。

書きたいこと書き方表示のされ方
見出し# 今日の打ち合わせ大きな見出しになる
小見出し## 決まったことひとつ下の階層の見出しになる
箇条書き- 納期は月末行頭に点が付いて並ぶ
番号付き1. 見積もりを送る1. 2. 3. と順番が付く
太字**重要**太字になる
記号は覚えなくてかまいません

記号を1つも使わず、ふつうの文章を書き並べるだけでも何も問題ありません。 Obsidianは打った記号をその場で見た目に反映してくれるので、 使ううちに手が勝手に覚えます。

見出しや箇条書きを使うのは、自分が後から読み返すときに分かりやすいから、 という理由だけです。最初は気にせず書いてください。

ファイルを自分で作る必要もありません。Obsidianで新しいノートを作れば、 自動的に .md として保存されます。 拡張子を意識する場面はほとんどないはずです。

そして将来Obsidianを使わなくなっても、メモ帳やテキストエディットでそのまま開けます。 アプリに閉じ込められないのが、この形式の一番の安心材料です。

なぜmdファイルはAIと相性がいいのか

一見地味な形式ですが、AIに渡すものとしてはこれが一番扱いやすい形です。理由は3つあります。

Notionとの違い

よく比べられるのがNotionです。どちらが優れているという話ではなく、 得意なことが違います

比べる点Obsidian(mdファイル)Notion
保存場所 自分のパソコンの中 Notionのサーバー(ネット上)
AIへの渡し方 フォルダを指定するだけ 連携の設定をするか、コピーして貼る
見た目・操作性 素っ気ない きれいで扱いやすい
複数人での編集 苦手 得意
表やデータベース 簡単な表まで 並べ替え・絞り込みまでできる
サービスが終わったら 手元にファイルが残る 書き出し作業が必要

Notionも連携(コネクタ)を設定すればAIから読めます。ただ、設定の手間がかかるうえ、 毎回ネット越しに取りに行くことになります。 手元のファイルなら「このフォルダを読んで」の一言で済むので、 AIと何度もやり取りする作業ファイルほど、Obsidianのほうが軽快です。

使い分けの目安

AIに読ませて働かせるもの——作業メモ、決定の記録、調べたこと——は Obsidianに置く。 人どうしで見せ合うもの——共有資料、タスク管理、顧客リスト——は Notionのようなツールに置く。この線で分けると迷いません。

導入手順

ここから順番に進めれば、30分ほどで使える状態になります。

  1. 公式サイトからダウンロードする
    obsidian.md/download を開きます。 使っているパソコンに合わせて Mac 版か Windows 版を選んでください。 会員登録もメールアドレスの入力も必要ありません。
    Mac の場合、ダウンロードしたファイルを開くとアプリのアイコンが出てくるので、 それを「アプリケーション」フォルダにドラッグします。 Windows の場合はダウンロードしたファイルをダブルクリックすれば導入されます。
  2. 「保管庫」を作る
    Obsidianを最初に起動すると、保管庫(Vault)を作るか選ぶ画面が出ます。 難しそうな名前ですが、保管庫=メモを入れておくフォルダ1つのことです。 それ以上の意味はありません。
    「新規保管庫を作成」を選び、名前場所を決めます。 名前は work、場所は書類フォルダにしてください。 名前は後から変えられますが、場所選びだけは失敗すると面倒なので、 理由は次の章で詳しく説明します。
    作成すると、まっさらなメモ画面が開きます。保管庫は1つあれば十分です。
  3. フォルダを7つ作る
    アプリの左側にファイル一覧が出ています。ここで右クリック →「新規フォルダ」で、 「フォルダ構成」の章にある7つのフォルダを作ってください。 パソコンのフォルダを直接作っても同じです(中身はただのフォルダなので)。
  4. 最初のメモを1つ書く
    00_inbox の中に、何でもいいのでメモを1つ作ります。 使い方を覚えるための練習ではなく、空のままにしないためです。 空のフォルダは、そのまま使われなくなります。
  5. AIに読ませてみる
    最後に、AIに work フォルダの場所を伝えて 「この中のメモを読んで、内容を要約して」と頼んでみてください。 ここまで来れば導入は完了です。

フォルダをどこに置くか

ここが一番つまずくところです。置き場所を間違えると、AIがファイルを読めません。 理由も含めて説明します。

置き場所評価理由
書類フォルダの中 おすすめ パソコンの中に確実に実体がある。AIから読める。場所も分かりやすい
クラウド同期フォルダ 注意が必要 iCloud・Dropbox・OneDriveなど。下記の落とし穴あり
デスクトップ 避ける 他のファイルに埋もれて、見た目が散らかる
ダウンロードフォルダ 避ける 整理のときに誤って消す危険がある
クラウド同期フォルダの落とし穴

iCloud や OneDrive には「使っていないファイルはパソコンから消して、 クラウドにだけ置いておく」という容量節約の機能があります。 この状態のファイルは見た目はあるのに実体がないため、 AIに読ませようとしても読めません。

また、複数のパソコンで同時に開くと、同期がぶつかってファイルが二重になることがあります。 複数の端末で使いたい場合は、クラウドに置くのではなく Obsidian Sync (月4ドル〜)を使うほうが安全です。

パソコン1台で使うなら、書類フォルダの中に置くのが一番確実です。 あとからでも、フォルダごと移動して Obsidian で開き直せば場所は変えられます。

フォルダ構成

番号付きの7フォルダに落ち着きました。 番号は並び順を固定するためだけのもので、深い意味はありません。 迷ったら、この形をそのまま使って大丈夫です。

フォルダ入れるもの判断の目安
00_inbox とりあえずのメモ 行き先を考えたくないときの避難先。ここが空である必要はない
10_projects 終わりがある仕事 「いつ終わったと言えるか」が言えるならここ
20_areas 終わらない役割 経理、健康、自社サイトなど。ずっと続くものはここ
30_resources 調べたこと・参考資料 自分の仕事とは直接関係ないが、後で見たいもの
40_archive 終わったもの 消さずにここへ。判断の記録は後から効いてくる
90_templates 書き出しの型 議事録・案件立ち上げなど、毎回同じ形で書くもの
daily その日のメモ 日付だけのファイル。整理しなくていい場所を1つ持っておく

分類に悩む時間がいちばんもったいないので、 迷ったら全部 00_inbox に置くと決めています。 きれいに整理された空のフォルダより、雑然としていても書かれたメモのほうが価値があります。

AIの使い方3つ

置き場所ができたら、AIの使い方は3つに整理できます。順番に難しくなりますが、 1つ目だけでも十分に効果があります。

  1. 読ませる — 前提を渡す
    相談の前に「このフォルダを読んでから答えて」と伝えるだけ。 経緯を説明し直す手間が消えます。いちばん簡単で、いちばん効果があります。
  2. 書かせる — 決まった瞬間に残す
    話がまとまったら「今の結論を1行でメモに追記して」。 自分で書こうとすると後回しになって消えるので、 決まった瞬間にその場で書かせるのがコツです。
  3. まとめさせる — 溜まったものを棚卸しする
    月末に「先月のメモを読んで、やり残しと決まったことを一覧にして」。 自分では気づかなかった放置案件が出てきます。

特別なプラグインも連携設定も使っていません。 ふつうのフォルダに置いてあるテキストファイルなので、AIに読み書きさせるだけで成立します。

AIに読ませる範囲を決める

「読ませない場所」を先に決めておく

メモには、請求書の金額や固定費、取引先の連絡先といった、 人に見せられない情報が自然と混ざっていきます。 そこへ「このフォルダ全部読んで」とやると、意図しないものまで渡すことになります。

なので書きはじめる前に、読ませてよいものとそうでないものの線を引いておきます。 あとから混ざったものを仕分けるのは、かなり骨が折れます。

うまくいったのは、次の2つを守ることでした。

公開リポジトリに置くファイルと、手元だけに置くファイルを分けるのと同じ発想です。 AIに渡す範囲も、最初から決めておけば迷いません。

個人的なメモもObsidianで書きたくなったら

そのときは保管庫をもう1つ作って分けるのが確実です。 画面左下の保管庫アイコンから「新規保管庫を作成」を選べば、いつでも増やせます。 以後は同じアイコンで行き来できます。

最初から2つ用意する必要はありません。 仕事用の1つで始めて、必要になった時点で分ければ十分です。

運用ルール

きれいに書こうとしない
読み返すのは自分とAIだけです。体裁を整えようとした瞬間、書くのが止まります。 箇条書きの断片で十分で、整えるのが必要になったらAIにやらせれば済みます。
決まったことは、その日のうちに1行書く
「あとでまとめて」は来ません。判断の理由まで書いておくと、 半年後に同じ問題が来たときに丸ごと再利用できます。
増やすだけにしない
年に数回、古くなったメモを見る時間を取ります。 終わったものは 40_archive へ。 消すのではなく移すだけなので、判断に迷いません。

AIは前回の会話を覚えていないので、覚えておいてほしいことは会話ではなくファイルに置きます。 置き場所さえ決めておけば、使うAIが変わっても担当者が変わっても、記録は手元に残ります。 Obsidianはそのための入れ物として使っています。

同じ .md ファイルを使って、 AIに「仕事の進め方」そのものを覚えさせる方法もあります。 そちらは 「skills」ってなに? にまとめました。